寝るまでの時間 あかねは、寝つけずにいた。 疲れ過ぎたのか、それとも心に秘めた悩みなのか・・・ 心で眠ろうと思っても、ちっとも眠れない。 それどころか、頭の中では色んな思いが数多く交錯していた。 いつもより点数が低かった抜き打ちテストや、体育の授業で失敗してしまった事、 身勝手な事をして早雲にきつく叱られた事、珍しく自信作の料理が非常に不味かった事・・・ いくつもの思いがぐるぐると頭の中を巡っていた。 こんな事なんてどうでもいい、早く寝かせて・・・ 頭の中に言い聞かせても、次から次へと思いが出て来る。 しまいには初めて乱馬に会った時の思い出や、乱馬に命を助けられた時の事・・・ 気付けば、頭の中は全て乱馬になっていた。 中には、聞いた事もないような甘い言葉や、滅多に見せる事もない情熱的な眼差しすら浮かんで来た。 あかねは思わず起き上がった。 静かな部屋、窓からの夜空の光、いつもの世界が戻って来た。 少しだけ開いている窓からは、少し涼しい風が、ゆっくりと入っていた。 時計を見るともう二時を回っていた。 こんなに、長い間眠れていなかったの? そう自分に問う。 もちろん、誰も答えを出さなかった。 そして、あかねは再び眠ろうとしていた。 再び、乱馬が現れた。 どうして呼んでいるのかはわからない。 でも、手が届きそうで届かない。 自分の、脳裏の世界・・・ どうして、乱馬が出て来るのか、自分で分かっているようで、分かっていない。 そのうち、眠りたいのか、乱馬を見ていたいのか、わからなくなってしまった。 「おい、あかね、起きろよ。」 あかねが少しだけ目を開けると、すぐそこには乱馬がいた。 「乱馬ぁ・・・そんなに私、乱馬の事が好きなの?」 乱馬は一瞬硬直したが、あかねの言っている言葉の意味がわからず、首をかしげていた。 あかねは、目を閉じると、布団を被ってまた眠ってしまった。 終わり。